ザンビア産エメラルド(無処理)

ライブラリ
2018年07月23日

無処理のエメラルドは原石の質の良い部分だけを研磨して宝石にしたものです。右のエメラルドは、0.7カラットのザンビア産の無処理のもので、美しいグリーンをしています。よく見ると濃い面、淡い面、反射している面が構成するモザイク模様のバランスがとれているのがわかります。

無処理のエメラルドには多くの場合若干のキズが目に入ります。エメラルドの結晶はキズが多いのでカッターは全てを避けて研磨することは不可能だからです。美しさと耐久性に大きく影響しない限り、あまり神経質にならずに全体を見て品質を判定することが必要です。無処理のエメラルドはオイルや樹脂を石層に含浸してキズを隠していないので、経年変化でキズが目立って美しさを失うことはありません。宝石は自然の力が造ったものなので完璧を求めることは間違いです。それが欠点とならなければ不完全を許容する判断力が我々に求められているのです。 下のエメラルドのリングは両サイドにオーバルシェイプのブリリアントカットをセットしたスリーストーンリングです。スリーストーンリングは宝石の連鎖の美しさを引き出す伝統的な装身具のスタイルです。エメラルドは角を守るため幅広のイエローゴールドでプロングセットされています。エメラルドはイエローゴールドにセットするとグリーンに黄色味が加えられ一層美しさが引き出されます。特にブルーの強いザンビア産エメラルドにはイエローゴールドとの組み合わせは必須です。
無処理のエメラルドが多い産地はジンバブエのサンダワナ鉱山です。平均0.08カラットと小粒のものですが低品質のものを除いてオイル処理をしていません。その他パキスタンのスワット、アフガニスタンのパンシール、ブラジルの無処理のエメラルドがあります。またコロンビア産のキズの極めて少ないものに無処理と判定出来るものがあります。

Specific gravity : 2.72

Zambia, Untreated

Gem Quality

Size (mm) : L 5.9×W 4.6×D 3.22

Weight : 0.73 ct

エメラルドの含浸処理
1966~89年の23年間にコロンビアのボゴタで買い付けたエメラルドは、宝石の品質について、大いに学ばせてくれました。買い付けの際には、内部から表面に達しているキズ(面キズ)のあるエメラルドを可能な限り仕入れないようにしていました。ところが、ある時お客様から2、3年前に仕入れたエメラルドの色が変わってしまったとのクレームが入ったのです。早速調べたところ、こんなにキズの多いエメラルドを販売した覚えはありませんでした。これは、わずかな面キズから含浸させたオイルが蒸発してしまった結果でした。当初、エメラルドをオイル仕上げすることは、女性のお化粧のようなものと理解され、問題にされていませんでした。しかし、真空や圧力の技術により、オイルや樹脂の含浸の方法が次第に高度化してきたことが、逆にこのクレームのような問題を引き起こす原因となったのです。
無処理のザンビア産エメラルドは、1972~80年に香港で研磨されていました。このエメラルドはサラサラしています。オイルを軽くつけると、艶が出るのがわかっているのですが、それをせず、品質の安定にこだわっているのです。過不足ない情報により、お客様は自分の考えで品質の判定ができるようになります。つまり「受け継ぐ人に喜ばれる」質の高いジュエリーには無処理のものを、アクセサリー感覚のものにはオイルまたは樹脂含浸処理のものをと、使い分けられるのです。
オイル、樹脂含浸の有無は、面キズ、顕微鏡によるインクルージョンの特徴により判別可能です。また、アルコール液に一昼夜から数日浸すことで、オイル含浸の有無が確認できます。 面キズ
写真・左側の髪の毛より、はるかに細い線がエメラルドの面キズで、ここからオイルや樹脂を内部に染み込ませて、亀裂を目立たなくします。品質の良いものには、含浸処理の必要はありません。
干渉色
上の顕微鏡写真の、エメラルド内部に見える黄色の干渉色を、ご覧ください。空気が残っているごくわずかの亀裂に、オイルや樹脂が含浸されると、狭いすき間にこのような干渉が起こるのです。これは水に浮いた油の中に見える色と同じ現象です。含浸の有無を確認する、非破壊検査の一つの手法です。 品質の見分け方
地中から掘り出されたエメラルドの原石は、内部の状態を観察するために通常ベビーオイルに浸します。エメラルドはキズが多いためオイルが石の内部に浸み込みます。無処理のエメラルドに仕上げるためには、まずよく洗浄して浸み込んだオイルを取り除きキズを避けて研磨し美しい部分だけを宝石にするのです。私は故意にオイル処理されているものは別にして、ベビーオイルが完全に取除けていなくても無処理と考えています。
無処理のものは含浸処理のものと違い、オイルが蒸発してキズが見えるようになることはありません。明度(Tone)が4、5、6、ビューティグレードがS、そしてAも含めてジェムクオリティです。一方、C、Dのものは通常無処理のまま販売されることはありません。見かけは同じものでも、結晶の良い部分だけを研磨したものか、オイルや樹脂を含浸させてキズを隠すことを前提に研磨したものかどうかで、その価値は大きく異なるという理解が必要です。
無処理の鑑別書が添付されていても鑑別後オイルを浸み込ませることは簡単なので注意が必要です。
選び方
無処理だからといって美しさに欠けてしまっては宝石ではなくなってしまいます。「美しさ」は大前提として必要で、予算が許すならばジェムクオリティのものがおすすめです。また、無処理であれば多少目立つキズであっても、自然に大きくなる心配はないので、美しさを損なわぬ限り、全体のバランスのよいジュエリークオリティのものには魅力があります。無処理といえどもエメラルドは弱い宝石です。特にリングは運動や家事をする時ははずし、大切に扱って下さい。
1カラットサイズのジュエリークオリティは石のみの価格で1個当たり6,000USドルが目安です。(2001年現在)
Untreated